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新型コロナウイルス感染症の意識調査で浮き彫りになった課題

 製薬メーカーのファイザ―が、1200人の一般人を対象に実施した『新型コロナウイルス感染症に関する意識調査』によれば、感染症法上の位置づけ5類移行によって市民の意識が、最盛期と比べて回答者の約7割が「流行当初より怖い病気ではない」、4人に1人が風邪と同じと認識する一方、後遺症や重症化については8割強が「依然不安」とし、今後感染した場合の受診意向は高いものの、若年層で「受診したくない」も1〜2割存在することが分かりました。
 3年に及ぶコロナ禍は、私たちの日常生活のあり方が大きく変革し、働く現場ではテレワーク、医療機関ではオンライン診療、そしてドラッグストアや調剤薬局での服薬指導も店頭にゆかなくてもオンラインが可能になったことで、医療の流れは大きく変革しまいます。ただ問題はこれからです。元に戻りつつあるとはいっても、24時間、患者のために活動された医療最前線でのメディカルスタッフのことを忘れずに、日常生活での対策法、特に日々の感染予防を忘れずに実行したいものです。
 ファイザーの意識調査では、さまざまな課題が浮き彫りにされました。皆さまは、どのように思われますか?以下に概要をご紹介いたします。(文・山本武道
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7 割が「流行当初より怖い病気ではない」とし4 人に 1 人が「風邪と同じ」としたものの後遺症や重症化は 8 割強が「依然不安」と回答    ファイザーが『新型コロナウイルス感染症に関する意識調査』 
 ファイザー株式会社が、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類への移行に伴い、全国20歳以上の一般人1,200名を対象として実施した『新型コロナウイルス感染症に関する意識調査』で、7 割が「流行当初より怖い病気ではない」とし4 人に 1 人が「風邪と同じ」としたものの、後遺症や重症化に対しては8割強が、「依然不安」と回答していることが判明しました。(調査の回答内容は以下を参照)

<現在の新型コロナウイルス感染症イメージ>
 新型コロナウイルス感染症について現在のイメージを聞いたところ、流行当初と比較して 「怖い病気ではない(あまり怖い病気ではない/怖い病気ではない/まったく怖い病気ではない)」と感じている方は 65.4%(785人)。
 一方、「怖い病気だ(非常に怖い病気である/怖い病気である/やや怖い病気である)」と感じている方は 23.5%(282人)にとどまった。これは、60 代、70 代の高齢者でも、それぞれ 27.5%(55人/200人)、31.0%(62人/200人) で、同様の傾向が見られた。

<新型コロナウイルス感染症の恐怖感の理由>
 「流行当初よりも怖い病気と感じている」と回答した282 人に、その理由を複数回答で尋ねたところ、「ワクチンの接種を受けても(再度)かかる人がいるので」が 63.8%(180人)で 最も多く、「社会全体の感染対策への意識が低下しているような気がするので」が42.2% (119 人)、「自分がかかった時、医療機関が(逼迫状況などで)受け入れてくれるか不安なので」が 36.2%(102 人)の回答が続いた。 

<流行当初の新型コロナウイルス感染症イメージ>
 新型コロナウイルス感染症流行当初、「怖い病気である(非常に怖い病気である/怖い病 気である/やや怖い病気である)」と感じていた方は 79.2%(950 人)。 

<新型コロナウイルス感染症後遺症に対する意見>
 新型コロナウイルス感染症の後遺症について、後遺症の存在や諸症状をご存知でない 方を除く 1,014 人に伺ったところ、86.3%(875 人)が「怖いと思う(非常に怖い/怖い/やや 怖い)」と回答。 

<新型コロナウイルス陽性時の医療機関受診意向>
 今後、新型コロナウイルス感染症に感染した場合の受診意向は全般的には高いものの、20-40代では、「なるべく受診したくない」の比率が、それ以上の年代と比べてやや高かった。 受診したい理由は、「重症化したくないので」が6割存在している。  今後、新型コロナウイルス感染症に感染した場合の医療機関への受診意向を尋ねたとこ ろ、「症状がつらい場合は受診したい」が36.8%(442人)で最も多く、「陽性になったら症状がなくても受診したい」が32.8%(393人)、「症状がつらくなく動けるようであれば受診したい」が20.4%(245人)と続き、受診意向は全般的には高かった。
 一方、20代では 18.5%(37人/200 人)、30代で12.0%(24人/200人)、40代で14.5%(29 人/200人) が「なるべく受診したくない」と回答し、それ以上の年代との差が見られた。

<医療機関受診意向理由>
 受診希望の理由について、受診意向のある1,080 人(442人+393人+245人)に複数回答で尋ねたところ、「重症化したくないので」の回答が60.3%(651人)。「(受診せずに)家族や友人・同僚などにうつすと迷惑をかけるため」が 41.6%(449人)、「後遺症が怖いので」が 38.4%(415人)の回答が続いた。 

<新型コロナウイルス感染症の抗ウイルス薬認知度>
 新型コロナウイルス感染症に対する経口抗ウイルス薬の認知状況を尋ねたところ、「治療 薬があることは知っているが、詳しくは知らない」が 65.1%(781 人)で最も多く、「治療薬 があることを知っており、どのような薬か(ある程度)詳しく知っているのは9.3%(111 人)いた。 

<新型コロナウイルス感染症経口抗ウイルス薬使用意向>
 新型コロナウイルス感染症に感染した場合、経口抗ウイルス薬を「使って欲しい(使って 欲しい/どちらかと言えば使ってほしい)」と考えている方は 70.9%(851 人)だった。 

<新型コロナウイルス感染症経口抗ウイルス薬使用意向理由>
 経口抗ウイルス薬の使用を希望する85人に対し、その理由について複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「重症化したくないので」が72.7%(619人)で、「早く治したいので」が57.8%(492人)、「後遺症が怖いので」が30.8%(262人)と続いた。
 
<調査結果のコメント>
 今回の調査結果について、東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授の舘田一博さんは次のようにコメントしています。
 「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが 5類に変更されて1か月あまりが経過しました。社会活動の正常化に向けて大きく舵が切られ、流行前の生活を取り戻そうとみなさまが前向きに進み始めました。
 今回の調査では、新型コロナウイルス感染症について流行当初に、8割近くが『怖い病気である』と認識されていたものの、現在は逆に約65%の方が『流行当初と比較して怖い病気ではない』と認識されており、高齢者でも同様の結果が示され、みなさまの意識の変化が示され、一方、8割以上の方が後遺症や重症化について不安に思っておられることも分かりました。  
 新型コロナウイルス感染症は、「風邪と同じようなもの」と回答された方が4人に1人、『命に関わることはない』と回答された方は2割近くという結果も示されました。加えて20-40 代の方々で感染症にかかっても、『なるべく受診したくない』の比率が他の年代と比べてやや高いことも分かりましたが、これらの結果は危惧されるところです。
 新型コロナウイルス感染症は、明らかになっていないことも多く、後遺症や重症化といった特徴的なリスクには引き続き留意する必要があります。感染症の新規患者数は現在、横ばいの状況にありますが、人流の増加などにより再流行や新たな変異株の出現といった可能性も否めません。感染症法上の位置づけは変わり、今後治療や予防については個人でご判断いただくところではありますが、迷われる際は医師の判断を仰ぐことが必要です。
 今後も感染症関連のさまざまな情報が発信されると想定されますが、みなさまには感染症に対する正しい情報に触れていただき、特にお子さん、高齢者、基礎疾患をお持ちの方、そのような方々と同居されるご家族などでは、新型コロナウイルス感染症はワクチンで予防し得る病気であることも鑑み、ワクチン接種の検討とともに、感染した場合には早期受診と早期治療という感染症の基本原則をご記憶に留めていただければと思います。
 そして医療従事者のみなさまには、新型コロナウイルス感染症の診療においては、「重症化したくない」「早く治したい」「後遺症が怖い」といった患者さんの声にぜひ耳を傾けて、ご対応いただきたいと思います。

<調査概要> 
調査期間:2023 年 4 月 21 日〜4 月 24 日 
■調査対象:全国の 20〜79 歳の男女 1,200 人 (直近 2 週間以内に、新型コロナウイルス感染症との診断を受けていない、 もしくは新型コロナウイルス感染症を疑う症状がないと回答された方について、年代、性別で 100 人ごとに均等割付、小数点第二位以下四捨五入) 
■調査方法:インターネット

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