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がん体験レポート 芸人のだいたひかるさんのケース

乳がん疾患啓発イベント『わかる乳がん~わたしにあった治療の見つけ方』その3

 がんの患者さんは、医師から「あなたは、がんです」と宣告されたときの受け止め方は様々ですが、『週刊がん もっといい日』では、アストラゼネカとキャンサーネットジャパンとの共催で開催された啓発イベント『わかる乳がん~私にあった治療の見つけ方』に登壇されたがん患者さんの体験レポートを紹介しました。前回(11月3日号)では、認定NPO法人マギーズ東京代表、元報道記者・キャスターの鈴木美穂さんのケースを報告しましたが、今回(11月10日号)は、芸人のだいたひかるさんです。

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2Bの乳がんと診断され右乳房を全摘したが5年後に再発

 ひかるさんは2014年に不妊治療を始めましたが、2年後に2Bの乳がんと診断されたことで中断。右乳房の全摘手術を受けたものの、その全摘した右胸にしこりが見つかり2019年に再発しました。

 「乳がんと告知されたときは絶望しました。だって乳がんの知識はぜんぜんなかったので、『先生、不妊治療をしているんですが、やめた方がいいですか』なんていうことも話していました」

 ひかるさんは、ある日、無料のクーポンを使って検査に行ったところ、医師が、ひかるさんの胸を触診し、しこりがあるといわれました。「先生、間違っているのでは思うくらいに自覚症状はなかった」そうです。        「いろいろと調べていただいて、『私、がんかもしれない』と、どんどん思うようになっていって、最終的には先生から『ご家族と一緒に結果を聞きに来てください』といわれましたので、これはもう駄目なんだと思って、そこから観念しました。温存手術をするのか全摘手術するのかといわれ、先生もいろいろと教えてくださったのですが、大事なことをいわれていることはわかっていても、なかなか理解できませんでした。結局は先生から『全摘です』といわれたのです」と話すひかりさん。                                         「私の場合、しこりが大きかったものですから、『早く手術したほうがよい』といわれていたのですが、パニック状態のなかで、いかにテンションを下げないで冷静に判断していくのがすごく難しかった。ただ夫が冷静にいてくれたのがありがたかったですね。家族に支えられながら、乳がんの手術をしたなって実感しています」

 治療を始めてから、ひかるさんは、「恐怖感がありました。どこに向かっていったらよいかわからない状態で情報もどれをピックアップしたらよいのかわかりませんでした」と語るひかるさん。そんなときにサポートしてくれたのがご主人でした。                                              「がんになったけど元気に暮らしている方たちの本を、夫が買ってきてくれて、それを読んで気持ち的に、自分もしかるべき治療をして、また元気になれるんだなと思ったので、治療に専念することができました。いろいろな治療をやりましたが、人間て、とても強くて、そのうち慣れてくるんですね。スーパーへ行ってみようかなと思ったり、調子のよいときはマラソンしたり縄跳びをしたりとか、そんなことをして暮らしていました」               「がんは壮絶」というイメージがあったというひかりさんは、こうも語っています。              「腫瘍もいろいろあって、思いっきり苦しむというよりは、すべて受け入れて自分のものにしてというような感じで、だから抗がん剤を飲み仕事は休もうと思ったのですが、でもコツをつかんできて抗がん剤もスケジュールも、闘病の後半では仕事をしようかなと思って、少しずつ仕事を増やしていきました」

がん体験を語る だいたひかるさん

検査をして自分の人生プランを考えていくことが大切・・・

 ところで、ひかるさんは遺伝学的検査を受けました。                           「40歳で乳がんになると遺伝性の可能性がある」と主治医からいわれ、『保険適用になったし受けてみたらどうですか』と勧められてやってみようと思いました。というのは、その時には子供はあきらめていましたので、今後の人生で夫と仲良く暮らしていくのには、遺伝性であれば、もう一つ残っている胸を予防的にとってしまおうと検査を受けました。私の感覚では、なんとなく自分の血液型を知るように、自分のことを知っておきたかったので受けてみましたが、それには私のがんが遺伝性であれば、家族にもがんになる可能性があることを知らせることになってしまうかもしれないという難しいところはありました。                                    でも家族に相談したら、『調べていい』ということでした。検査は、次の一手が受けられるので、自分はどのようなタイプなのか知っておけば、もし遺伝性であったら私は手術をしてほしいと選択を早められることはすごく良いと思いました。がんて、一番怖いのは、検査を受けないで悪い状態になってしまうことです。だから早めに自分のことを知るために乳がんの検査、遺伝子的検査は自分自身が決めることですが、やりたい人はやって自分の人生プランを考えていくことが大切だと思っています」

 2020年、ひかるさんは放射線治療を一時中断し不妊治療を再開。そして2021年5月に第一子を妊娠、今年(2022年)1月に出産しましたが、夫唱婦随による「がんとの闘病生活」にエールを送りたいと思いました。(文・山本武道

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