がん患者さんと家族のためのWEBサイト

『温もり医療』と名づけられた書から思い出す母の温かい手のぬくもり

『温もり医療』と名づけられた1冊の書が、私の手元あります。ある会社の創設50周年を記念して2013年11月に発刊されたものです。著者からいただいた書ですが、副題には「人に優しい医療と福祉への思い〜悩む患者と家族の“コンシェルジェ”として「心」と「笑顔」を添えて」と記され、プロローグには、このように綴られていました。

 「人にはさまざまな出会いがある。人がこの世に生をうけて初めて触れる空気、温かい母の肌、やがて口にする乳房、そして自分に語りかける優しい言葉…。命の誕生は、決して神秘的ではない。人から人へと受け継がれる命のリレーであり、それは永遠に続く。

 人間は生まれた時のことを、すべて記憶しているかどうかはわからない。しかし成人してから、時折、夢のなかに懐かしい画像が浮かんでくることは確かにある。それも鮮明に、である。生まれてきて今日に至る80年に及ぶ私の記憶のなかに、これまで出会った多くの人々の温もりが、いつまでも残っている。夢の中に現れてくる優しい顔、懐かしい顔…いつも笑っている。

 医療との出会いは幼少の頃だった。死ぬ寸前だった私を救ってくださった医師の温かい手のぬくもり、何かことがあると優しい言葉をかけていただいた看護師の靴音…。80歳を越したいまでも忘れられない」

 私は、いまでも時折、同書のプロローグを読むようにしています。私自身も、フリージャーナリスト時代に、病に倒れた母の手を繋ぎ病院に通ったことがあったことを思いだすからです。母の手は、とても温かく、年をとり日増しに弱っていく母が時折見せる笑顔も思い出します。

 同書を執筆された著者は、今年で90歳。つい最近お会いしましたが、一線は退かれましたものの、とてもお元気で、「母の手のぬくもりは、今もなお忘れていない」と話しておられました。

 がん最前線。患者と家族は、医療・介護に携る多くの人々が添える「心」と「笑顔」に、どれほど勇気づけられているでしょうか。84歳で亡くなった母は、「医療を提供していただく方々に感謝感謝…」が口癖でした。

 さて今週もまた、皆さまにとって「もっといい日」でありますように…。

  『週刊がん もっといい日』編集長 山本武道

PAGE TOP