東京・台東区上野には、知る人ぞ知る、食品販売を主流とした通称アメ横があります。毎年12月も終盤になると、正月用の刺身やカニ、かまぼこなどを求める人々で混雑しますが、私も社の忘年会を抜けで買い物をしました。あちこちで、店のスタッフたちの声が聞こえ、あらためて「今年ももう終わりなんだ」と思いながら、魚を買い求めたものです。
さて、このアメ横には、ビルを丸ごと使用し、いつもたくさんの人で賑わっているのがマツモトキヨシ(現マツキヨココカラ&カンパニー)です。前回(11月10日更新)にドラッグストアのことを書きましたが、実は、この店はマツキヨにとっては記念すべき店舗でもあるのです。
1932年、今からちょうど90年前になりますが、千葉県松戸市小金井に小さな薬店が開業しました。創業当時の店名は松本薬舗。愛情あふれる創業精神を基本として“親切なお店”、“良い品をより安く”をモットーに、常に地域住民の満足を追求してきたのが、創業者の松本清さん。やがて店名を、地域住民に知ってもらうために、自身の呼び名をカタカナにして「マツモトキヨシ」として、地盤を強固なものにしていきました。
当時、我が国の医薬品小売業には「ドラッグストア」という業態はありませんでしたが、体調を崩した人々のために親身に相談にのる一方では、健康な人にも、より健康に美しなるための情報(ソフト)を添えてヘルス&ビューティ商品(ハード)を推奨する店舗も、相次いでお目見えしていました。
1987年、アメ横にオープンした店舗は、マツキヨにとってはまさに“ドラッグストア元年”でもありました。アメ横の中央に開業した店舗には、たくさんの商品が陳列され、セルフ方式で来店客が自由に買い物をする1階から2階に通じる階段の両脇には、女性客が思わず手に取ってみたくなる商品が取り揃えてあり、見ながら上の階に誘導する仕掛けでした。
階段を昇り辿り着いた売り場には、美しく健康になるためのカウンセリングに長けたスタッフが常駐し、買い物客に楽しさと満足を提供してくれていましたが、さらにマツキヨが全国に知れ渡ったのが、1996年にタレントの山口もえちゃんを起用したテレビCMの放映でした。もえちゃんが、笑顔で店内を見て回るシーンに、CMを見た多くの人は、思わず「ドラッグストアって楽しい!」―そう思ったようです。
全国に展開するドラッグストア。2025年に10兆円産業を目指してきましたが、どうやらゴール達成当確は間違いなさそうです。今日の発展には、多くの企業と、そこに働くスタッフたちの存在抜きにしては考えられませんが、マツキヨをご紹介したのも歴史の一コマとして受け取ってください。
さて今週もまた、皆さまにとって「もっといい日」でありますように・・・。
『週刊がん もっといい日』編集長 山本武道