がん患者さんと家族のためのWEBサイト

がんを不必要に怖がらず正しい行動ができるように語りかける書『暴走する細胞たち〜がんの神話と謎』

 「人は、なぜ、がんになるのでしょうか? がんとは、そもそもなんなのでしょうか? 」―がんを不必要に怖がらず、正しい行動ができるように語りかける書『暴走する細胞たち〜がんの神話と謎』が、丸善出版から発行されました。同書は、ジョンズ・ホプキンス大学医学部の腫瘍内科医で教授のリチャード・ジョーンズ博士と、元システム・ソフトウェアエンジニアのマイケル・マコーミックさんの共著。訳者は、公益財団法人佐々木研究所附属佐々木研究所副所長(腫瘍細胞部部長)の山口秀樹さん。

 「がん患者とその家族、医師、学生に、がんに関する正しい知識と情報を提供することで、がんに対する恐怖心をなくすこと」を目指した書ですが、ではなぜ、このお二人が、がんに関する書の発行に関与したのでしょうか。

 「少年時代から60年来の友人であるリチャード・ジョーンズ博士(通称リック)は、がんについて大切なことを多くの人たちに伝えたがっていましたし、私は、がんという病気をもっと知りたいと思っていました。私たちの長い交友関係の中で、家族や友人の多くが、がんにかかり、私たちの両親は全員、がんで亡くなったのです」(序文から)と同書の共著者であるマイケル・マコーミックさんは綴り、ジョーンズ博士について、こう紹介しています。

 「彼は、ジョンズ・ホプキンズ大学医学学部の腫瘍内科の教授として、また血液悪性腫瘍・骨髄移植プロジェクトチームのディレクターとして35年以上に培った知識と見解を惜しみなく共有してくれました。医学会議やシンポジウムで講演するために、何度も世界中を飛び回ってきたのです。本書を通して、彼と彼のチームが、がん研究に貢献したことを学ぶでしょう」

「がんと向き合っている人、向き合わざるを得なかった人、がんと向き合うことになる人々にとって、ただ生き残るだけでなく成長する助けとなることを願っています」

 同書の目的は、①がんの生物学、予防、治療について、わかっていること、まだわかっていないことの理解を深める、②がんにまつわるいくつかの神話を否定する、③医師、家族、友人の助けを借りながら、良い質問をして、情報をもとに適切な判断ができるようにする、④最も重要なことは、不安や恐怖を減らし、より希望をもってがんに向き合うことと記されています。

 「リックと私は、一緒にこの本を書くことを楽しみました。あなたも同じように本書を楽しんで、何かを学んでほしいと思います。私は多くのことを学ぶことができたのですから」との文章からは、家族や友をがんで亡くしたことによって、「なんとかして、がん対策についてわかりやすく読めるよう・・・」―筆者の温かい心配りがうかがえます。
 
 目次は、第1章:がんの神秘と謎/第2章:がんの生物学 細胞が暴走する/第3章:がん幹細胞 タンポポ現象/第4章:転移 動く標的/第5章:臨床の基礎 研究から臨床へ、そして再び研究へ/第6章:治療対治療 ハエ、ハエたたき、タンポポ、芝かり機の話/第7章:がんの診断 知らない悪魔より、知っている悪魔のほうがまし/第8章:がん治療 戦争に負けることなく戦いに勝つ/第9章:がん予防Ⅰ 始まる前にやめる/第10章:がん予防Ⅱ 何事もほどほどに(ほどほどにもほどほどに)/第11章:私はいかにして心配するのをやめて、がんを恐れないようになったかーで構成されています。

 「リックも私も、この本が、がんと向き合っている人、がんと向き合わざるを得なかった人、そして将来、がんと向き合うことになるすべての人々にとって、ただ生き残るだけでなく、成長する助けとなることを願っています」と結ばれている同書。訳者の山口さんも、「本書や信頼できる情報源から知識を得ることで、がんを不必要に怖がらず、正しい行動ができることを願います」と呼びかけています。

 がん対策基本法が2007年に施行されてから18年。国は様々な対策を講じてきましたが、がんは相変わらず死因1位の状態が続いています。がん対策には、がんに罹患しないための一次予防、早期発見・早期治療の二次予防、再発・転移しないように取り組む三次予防がありますが、どれも重要です。そのためには、正確な情報が不可欠になります。
 
 がんで家族や友人を失った共著者が、自らの体験も紐解きながら、できるだけわかりやすく筆を取った同書。がん医療にかかわる医師や看護師などのメディカルスタッフのみならず、ドラッグストアや調剤薬局に勤務する薬剤師等々にも一読をお勧めします。
 形体:四六判・本文250ページ/価格:3080円(本体2800円+税10%)/発行元:丸善出版(03−3512−3266)。

PAGE TOP