医師は診療、薬は薬剤師がそれぞれの業務を分担する医薬分業(処方箋受取り率)は80%目前になってきました。現在、全国の医療機関から発行される処方箋は1年間に約8億枚、つまり一人が何度も処方箋を受け取っていることになりますが、近年ではドラッグストアや調剤を主体とする薬局が、病院から自宅に戻ってきた患者さんとご家族のニーズに対応するケースも少なくありません。「病院から自宅に戻り家族と共に暮らしたい」患者さんが増えてきたからです。
病院と同じような治療が受けられ、必要に応じ訪問診療を依頼することもでき、ドラッグストアや調剤薬局からは薬剤師さんが患者宅を訪問してくれる在宅医療。がん患者さんが増えたことで、抗がん剤や疼痛管理の必要性、栄養療法に不可欠な高カロリー輸液の調整業務に対応するために無菌調剤室(クリーンルーム)を導入するドラッグストアや薬局が目立ってきました。
現在、全国に存在する1200か所の無菌調剤室を設置したドラッグストアや薬局では、専門教育を受けた薬剤師さんが、訪問診療医から発行されるHIT(HOME INFUSION THERAPHY=在宅における栄養療法)処方箋を応需すると共に、患者宅へのデリバリー、患者さんと家族のケアに携わっていますが、実は在宅医療、特に無菌調剤に取り組む薬剤師たちは、いつ医師や患者、家族からの要請があるかもしれませんから、24時間、365日待機する必要があります。
「患者さんの輸液や抗がん剤の調整、とてつもないがんによる痛みを抑える疼痛管理、終末期医療の患者さんとご家族のケアに携わるのも私たち薬剤師の業務の一つ。それが在宅医療なのです」と話す薬剤師さんは、患者宅を訪問した際に見られた患者さんと家族の笑顔に「ホッとする」と語っていました。
薬剤師となったきっかけは、人ぞれぞれ異なります。調剤薬局チェーンの社長になった薬剤師さんは、両親が視覚障がい者であったことから雇用促進の一環として鍼灸治療院を併設した調剤薬局を運営するようになり、終末期の患者と家族が共に暮らせる施設を建設した薬剤師経営者、手話をマスターした薬剤師さん、そして24時間、365日、休日も昼夜を問わず、家族との旅行中、海外でもアイパットをもち、患者さんと家族のために在宅医療に取り組む薬剤師さん等々、たくさんの薬剤師さんにお会いしてきました。
「ただただ患者さんとご家族のために…」―在宅医療最前線で活躍する薬剤師さんたちは、働くことに生きがいを持ち、日々活動しています。現場で見た患者さんの笑顔、自宅に戻れば家族の笑顔。「薬剤師になってよかった」との言葉と私に見せた素晴らしい笑顔に、私自身の心がとても温かくなったことは再三。改めて薬剤師さんの活動にエールを送りたいと思いました。
さて今週もまた、皆さまにとって「もっといい日」でありますように…。
『週刊がん もっといい日』編集長 山本武道