がん治療による脱毛や肌など、外見の変化に起因するがん患者さんの苦痛を軽減するアピアランスケアが重視されるなか、つい最近、都内で治療による肌トラブルに悩むAYA世代のがん罹患者さんや経験者を対象とした『治療と仕事、プライベートを両立する方のための肌ケア』をテーマに、セミナーが都内で開催されました。
主催したのは、「日常に取り入れやすい適切なケアを知ってスキンケアやメイクを楽しんでいただきながら、皆さまが自信をもって前向きな気持ちになるためのお手伝いができれば・・・」として、がん患者さんのQOL(生活の質)向上を支え、がんに罹患しても安心して生活できる社会の実現に取り組む製薬企業の第一三共ヘルスケア。
「AYA 世代とは、Adolescent and Young Adult の略で、一般的に 15〜39歳の世代を指し、学業・就学、就労、結婚、出産・子育てなど、人生の大きな転換期とがん治療が重なりやすい世代です。中高年層と比べ患者数が少ないことから、治療や副作用に伴う悩みが周囲に理解されにくく、外見の変化や肌トラブルについても、『命に関わることではない』と一人で抱え込んでしまうケースが少なくありません。AYA 世代特有の背景や課題に寄り添い、日常に取り入れやすい適切な肌ケアを通じて、QOL(生活の質)の向上を支援することを目的に開催しました」(主催者)

「日常に取り入れやすい適切なケアを知っていただくことによって、スキンケアやメイクを楽しんでいただき、皆さまが自信を持って前向きな気持ちになるためのお手伝いができたら嬉しいなと思っております」―第一三共ヘルスケア広報部の上吉川奈央さん(薬剤師)の挨拶でスタートしたセミナー。
この日、講師として登壇したのは、大学病院で臨床看護師を経験後、現在、第一三共ヘルスケアに所属し、看護師や医療関係者向けのスキンケア勉強会など、皮膚トラブルに関するスキンケアの情報提供活動を行っている東島愛美さん(看護師)、アピアランス・サポート東京 アピアランス・サポート相談室室長の村橋紀有子さん、ピアリング アピアランスケアアドバイザーの野村奈美さん。
東島さんは、『がん治療中でも日常から取り入れたいスキンケア』と題し、治療と日常生活が重なりやすいAYA世代に向け、無理なく継続できるセルフケアの重要性を強調。皮膚の構造や抗がん剤治療による肌への影響については、「抗がん剤によって基底層がダメージを受けると、皮膚の新陳代謝が低下し、乾燥を招いて皮膚トラブルを引き起こしてしまう」とそのメカニズムを解説。肌ケアで重要な3つのポイント(保清・保湿・保護)を紹介しました。
脱毛や肌の変化、爪の変色、肌のくすみなどのお悩みについて、アピアランスケアの専門知識を持つ美容師やネイリスト、エステシャンが、がん治療による副作用で外見に変化がある中でも生活の質を保てるようサポートする活動を行っているアピアランスサポート東京に所属し、病院や施設に相談室を設け、がん患者さんの外見の悩みへのアドバイスを行っている村橋さん。
「治療中は、副作用による肌のくすみや痒みなど、『医師に相談するほどではないが悩んでいる』という声が非常に多い」と、患者が抱える日常的な悩みの実情を語るとともに、こまめなケアが肌の状態を健やかに保つ鍵になると述べ、無理なく続けられるセルフケアの意義を強調。
「肌ケアは外見を整えるだけでなく、自己肯定感の向上にもつながる。治療で頑張る自分をねぎらい、穏やかな時間を過ごしてほしい」と、QOL(生活の質)向上における精神的なメリットにも言及しました。
講演の3番手は、乳がん体験者コーディネーターとして、病気やその治療などによって損傷した外見をケアするアピアランスケアメイクを中心に、がん研有明病院などで患者さん向けのメイクセミナーの講師も務める野村さんによるカバーメイク講座。
「肌の深い悩み、例えば、あざ、傷跡、色素沈着、シミ、白斑などを、メイクによって目立たなくしていく手法のことをカバーメイクと言います。現在では、ほとんどのお悩みをメイクでカバーすることができる時代になりましたが、AYA世代の方たちは、社会とのつながりが深い方が多く仕事をされている方、お子さんが小さくて送り迎えに毎日行かなければならない、婚活、デート等々・・・。
でも治療中だからといって、引きこもってばかりはいられない世代かと思いますので、治療中でも治療を感じさせないようなベースメイクの作り方をお伝えしていきたいと思っております。自分の外見を守ることは、治療を乗り越える力になります」と語り、カバーメイクが単なる化粧を超え、心の支えになる」と参加者に語りかけました。
座談会で語った患者さんの声とセミナーの感想
セミナー後半には、講師とAYA世代の参加者との座談会が行われ、「治療前まで愛用していた化粧品が肌に染みる」「脱毛が怖くてたまらない」「保護者会など人前に出る場面では、ウィッグを使い分けて何とか自分を保っている」「接客業で爪を見られるのがつらく、絆創膏を貼ったら不衛生と指摘され傷ついた」といった社会生活の中での心の痛み、さらに命に関わる治療を優先するあまり、「肌荒れくらいで病院に相談していいのか」と一人で抱え込み、引きこもりがちになってしまうという、AYA世代特有の心理的な障壁も浮き彫りになりました。
セミナー終了後に、AYA世代の参加者から主催者に寄せられた感想を、以下に紹介しましょう。
「治療で肌や顔の変化が気になっていたが、日常の中で、自分でケアできる方法を知ることができて安心した」「仕事や外出前にも取り入れられそうな内容で、無理なく続けられそうだと感じた」「肌の基本を改めて学べたことで、これまで不安だったスキンケアに自信が持てた」「楽しみながら参加でき、改めて自分の体を大切にしようと思えた」「自分を大切にする時間をもてて、鏡を見ることが少し楽しみになった」「同じように治療を経験した同世代の方々が前向きに日常を送っている姿を見て、これからの生活に希望が持てた」等々。
主催者の第一三共が実施したがん罹患経験のある働く女性を対象にした『がん治療中の肌ケアに関する意識調査』(https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/content/000138832.pdf)によれば、治療による外見変化に約 6 割が不安を感じる中、肌ケアを行って効果を実感した人の約8割が、「気持ちが前向きになる」などの心理的変化を感じたことが分かっており、「本活動を通じ一人でも多くのがん患者さん・サバイバーの皆さんが、自分らしく過ごせる後押しとなることを目指しています」(第一三共)
「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」と定義されるアピアランスケア。患者さんの悩みを相談する拠点づくり、ケアに対応するスタッフの養成等々・・・早急な普及が不可欠な時代が到来していることが伺えた、とても意義あるセミナーであったいえましょう。
さて今週もまた、皆さまにとって「もっといい日」でありますように・・・。
『週刊がん もっといい日』編集長 山本武道