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寄稿『看護師の知識や技術を生かし地域を支える力として誰もが安心して暮らせる社会を目指すキャンナスへの思い』全国訪問ボランティアナースの会キャンナス代表 看護師、主任介護支援専門員 菅原由美

阪神・淡路大震災が私の人生を変えたきっかけ

 1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生した時、私はテレビで被災地の様子を目にしました。その瞬間、「私が行かずに誰が行くのか」という思いが湧き上がりました。
 私は長年、ガールスカウトのリーダーを務め、サバイバル技術に自信を持ち、日本赤十字の救急法インストラクターの資格を最年少で取得していました。さらに看護師という資格持つ自分こそが、この状況に立ち向かうべきだと考え、家族に相談のうえ、すぐに現地へ向かいました。

スタッフと話し合う菅原さん
 菅原由美さん

 被災地では、長田市役所を拠点とする「AMDA (アムダ)」に加わり、避難所となっている公民館を巡回しました。当時、各県から派遣された保健師が多く、最初は看護師一人では受け入れてもらえませんでしたが、2日目から医師と行動を共にすることで、避難所の方々が心を開き、薬や健康状態について相談を受けることができるようになりました。
 避難所では、他のボランティアの姿勢に苦言を呈する場面もありました。「指示がないから動けない」と文句を言う若い看護師たちに対し、「ボランティアとは、自主的に行動するもの。あなたが動けないなら、他の人の負担を減らすために帰るべき」と厳しい言葉を伝えたことも忘れられません。
 また明石市の特別養護老人ホームにも訪問し、被災地での人手不足や過密状態の中で介護の必要な方々を応援しました。その中で、家族と離れ、一人静かに最後を迎える方を看取る経験もしました。焼け野原となった長田の街を目にした時、東京大空襲を想起し胸が締めつけられる思いでした。そこで生きたまま命を落とされた方々の数を想像するだけで、言葉を失いました。

活動するボランティアナーススタッフ

キャンナス立ち上げの背景

 震災後、AMDAの総会に参加した際に、私が抱いていた在宅ケアへの思いを、菅波代表や理事の方々に語りました。その時、「あなたの考えは時代に合っている。ぜひ始めなさい」と背中を押していただいたことで、キャンナスの設立が現実のものとなりました。
 特に、ある理事の方が、「医師たちが反対するだろうから、私を理事に入れておきなさい」と言ってくださったことは、心強いものでした。
 また、「さわやか福祉財団」で学んだボランティアの理念から、「活動を有償ボランティア」として展開することを決めました。この取り組みが、現在のキャンナスの基礎となっています。

キャンナスの理念とこれから

 キャンナスは、災害支援を目的にした団体ではありません。私自身の介護経験を通じて、介護家族に「息抜きの時間」を提供することや、がんケアのサポート、そして潜在看護師の掘り起こしを目的として設立しました。しかし東日本大震災での活動が注目を集めたことで、災害支援団体としてのイメージが強くなりました。
 現在、キャンナスは全国173か所に広がっています。看護師が地域で困っている方々を支える活動は、制度の隙間を埋める役割を果たしています。財政的な限界がある中で、公的制度だけでは十分に支えきれない人々の生活を、地域の「お互い様」の精神で助け合うことが、これからますます求められるでしょう。
 私は、「小学校に一つのキャンナスがあってもいい」という壮大な夢を持っています。それぞれの地域で、看護師が身近な存在となり、誰もが安心して暮らせる社会を目指しています。キャンナスの仲間一人ひとりが、「かかりつけナース」となれるよう、これからも頑張っていきたいと思います。
 キャンナスに興味をお持ちの方は、ぜひともお気軽にお問い合わせください。地域を支える力として、看護師の知識や技術を生かし、一緒に新しい形の支援を作り上げていきましょう。 
(連絡先:藤沢市鵠沼橘1-2-4-504/TEL:046626-3980/Mail:care@nurse.jp

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